電子カルテ移行へのステップとして~オーダリングシステム~【医療のICT化 第3回】
- 2015年04月1日
- コラム
- ICTオーダリングシステム
一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会による「オーダリング電子カルテ導入調査報告-2013年調査」によると病院のオーダリング導入率 32.4%であり、対前年度伸張率は、ここ数年、+7%前後と増えてきています。しかし、中小病院については、導入率はまだまだ低いのが実情です。
100床~149床の病院では導入率が25%となっており、平均に届きません。院内の連携で建物の構造上、オーダリングがなくても事が運べるというところもあるかもしれませんが、電子カルテ移行へのステップとして、患者様の待ち時間の短縮というサービス向上の一助としてメリットもあります。
今回はオーダリングシステム導入のメリットについて考えてみます。
オーダリングシステムの気になる投資額
オーダリングシステムはどういうネットワークを組むかによって導入費用に差がでます。
1床あたり、50万円から100万円と幅があります。最近では、中小病院向けに低価格のものもあるようです。
日本病院会の調査(2012年)によると過去5年間に投資したIT関連の金額についての統計平均では20~99床 1,2千万円前後に分布、100~199床 2億円程度に分布、200~299床 3~5億円前後に多く分布しており、一概にいえない現状があります。
オーダリングシステムの導入メリット
導入メリットとしては
- ① 患者基本情報が共有できる。(院内連携含む)
- ② 患者の待ち時間の短縮(診察室から、検査室、レントゲン室に連絡がいくため)
- ③ 各種伝票に使用していた紙代の削減
- ④ 伝票類運搬にかかるコストの削減(メッセンジャーなど)
- ⑤ 各診療行為や物品がコード化されており、コードの抽出により経営分析できるものがある。
- ⑥ 電子カルテを考えている場合、電子カルテシステムへの移行が容易
以上のことが挙げられます。
医師事務作業補助者の導入と電子カルテに向けて
現在の診療報酬の「医師事務作業補助加算」の施設基準には電子カルテシステム、オーダリングシステムが導入されていることが条件に書かれています。医師不足を考えると、医師事務作業補助の導入は必要となってきます。また、これから強化されてくるであろう、地域連携を考えると電子カルテ導入は必須の検討事項です。
とはいえ、電子カルテに関しては、各診療科の医師によって言い分があり、なかなか話がまとまらず、院内の導入検討会を重ねる必要があります。例えば、眼科だと日本眼科学会で推奨している電子カルテシステムを使いたいという要望があったり、皮膚科だと通常の検査以外にデジカメなどで皮膚の状態を写真に収めておくため、デジカメ画像の取り扱いをしやすいものという条件があったりします。現在、電子カルテの導入率が伸び悩んでいる背景には、院内で構想がありつつも、話がまとまらないということもあるのです。
電子カルテの本格的導入に時間がかかることを考えるとオーダリングシステムを進めていくのも一つの手です。オーダリングシステムの中には、オプションで電子カルテ機能のつけられるものもあります。今後を見据えた場合、必要なものとなるのではないでしょうか。
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執筆者 東條よしひろ
新潟県内の地域医療支援病院で8年間勤務ののち、専門学校講師として医療事務関連科目を担当。現在は医療事務関連の非常勤講師やコラムなどの執筆活動を行っている。