在宅療養支援歯科診療所
はじめに
在宅歯科医療を行なう上で、在宅療養支援歯科診療所の指定を受けていると、歯科訪問診療料1~3が算定することが可能になります。今回は在宅療養支援歯科診療所についてまとめてみました。
在宅療養支援歯科診療所ってなに?
自宅、または社会福祉施設などに入所している高齢者を歯科医療を通して療養を支援する歯科診療所のことです。
施設基準
- (1)過去1年以内に、歯科訪問診療料を算定していること
- つまり、在宅歯科医療を行なったことがあることを、公に認めてもらわなければなりません。
- (2)高齢者の身体や精神面の特性を理解し、口腔の機能管理ができ、緊急時対処ができるスキルなどを身につけた常勤の歯科医師が1名以上勤務していること
- つまり、院長や開設者が高齢者の心身特性や救急対応のスキルを身につけている必要はありません。勤務医でもいいので、こうした研修を受けた歯科医師がいれば大丈夫です。
- (3)歯科衛生士がいること
- 訪問して口腔衛生管理を行なう上で、歯科衛生士の存在は重要です。
- (4)訪問診療を担当しており、迅速に対応できる歯科医師を指定していること
- 訪問診療を担当している歯科医師を指定した上で、電話番号や診察可能日などを患者とその家族に文書により通知しておかなければなりません。
- (5)在宅医療を担う他の医療機関と連携していること
- 他に往診で診療をしてもらえる医療機関と連携していることが要求されています。
- (6)保健医療サービスや福祉サービスとの連携していること
- 医療機関だけでなく、その他の保健医療サービスや福祉サービスと連携しておかなければなりません。
- (7)訪問診療の後方支援機能を担える別の医療機関と連携していること
- 緊急時に対応してもらえる医療機関を確保しておく必要があります。
- (8)在宅患者数が全患者数の95%未満であること
- その歯科医院で診察している患者数の少なくとも5%は、来院してくる患者でなくてはならないということです。
在宅歯科医療を専門に実施する在宅療養支援歯科診療所ってなに?
平成28年度の診療報酬の改定の際に新しく設けられたのが、在宅歯科医療を専門にする医療機関です。一般の在宅療養支援歯科診療所とは異なり、在宅専門の歯科診療所には追加要件が設けられました。
施設基準
在宅療養支援歯科診療所の施設基準に加えて、下記の施設基準を満たしている必要があります。
- (1)その在宅療養支援歯科診療所のすべての患者数のうち、在宅歯科医療を提供した患者数の割合が、直近の1ヶ月で95%以上であること。
- つまり、ほとんど全ての患者が在宅歯科医療で治療を行なっていることが要求されています。
- (2)1年以内に、5軒以上の保険診療を行なっている医療機関からの初診患者の紹介を受けていること。
- つまり、自費診療中心の医療機関からの紹介はカウントされないということです。
- (3)在宅療養支援歯科診療所で行なっている在宅歯科医療のうち、60%以上の患者で歯科訪問診療1を算定していること。
- 歯科訪問診療1は、同一建物に居住している患者1名だけを診療した場合に算定できる項目です。つまり、老人ホームなどで同一日にたくさんの患者を診療している様な歯科診療所では、難しくなります。
- (4)在宅歯科医療の経験が3年以上ある歯科医師が勤務していること。
- 開設者や院長でなくてもいいので、3年以上の在宅歯科医療のキャリアのある歯科医師が1名以上いることが要求されています。
- (5)少なくともポータブルユニット、ポータブルバキューム、ポータブルレントゲンの3つは備えていること
- 在宅歯科医療で必要とされるこれらの器材がなければ、最低限の歯科診療もおぼつきません。器材があらかじめ準備されていることは、最低条件でしょう。
- (6)在宅歯科治療で、1年間に抜髄、感染根管処置、抜歯、義歯装着、義歯修理、リベースをそれぞれ20症例以上行なっていること
- 訪問診療での歯科治療の実績に最低ラインが設けられています。これ以上の症例を治療していないと、訪問歯科診療をしっかり行なっているとはみなされないということです。
まとめ
在宅療養支援歯科診療所の指定を得ることができれば、歯科訪問診療料1~3を算定することができます。算定を受けるためには、施設基準を満たして届け出ておかなければなりません。
施設基準に満たない医療機関の場合は、初再診料相当の訪問診療料を算定することになりますので注意をしましょう。
関連リンク
執筆者 抜歯屋さん
『市中病院に勤務している歯科医師です。専門分野は口腔外科です。電車に揺られて通勤中。好きなものはレゴとスターウォーズ。いつか、レゴで家の模型を作って、ストームトルーパーを配置するのが夢』