アポイントひとつでスタッフ間が険悪に!?みんな納得の予約の入れ方
治療のペースや、患者さんの人数はそれぞれの歯科医院で異なるため、予約状況が異なってしまうのは当然です。
しかし、予約を取る際に目安として治療時間がどのくらい必要なのか知らなければ、予約状況が非常にタイトとなります。また、時間内に終了できなければ次の患者さんに影響し、待ち時間を増やしてしまうことになりますので、適当という訳にはいきません。
そこで、大まかな治療にかかる所要時間や、診療室で働くスタッフに負担のならないような予約方法をご紹介していきます。
歯科医院ごとにやり方があると思いますので、全く同じく行うのは難しいと思いますが、歯科事務などの仕事を始めたばかりの方には特に有益となる情報ですので、是非参考にしてみてください。
治療内容と所要時間は変動的
電子カルテが義務化されたことにより、パソコンを以前よりも使う頻度が増えたという歯科医院も多く、その流れで予約もパソコンで行うようになった歯科医院も多いのではないでしょうか。
パソコンなどで予約を取る場合は基本的に、この治療は何分と登録されていて、それを貼り付けていくような感じですので非常に楽ですし、見やすく管理することができます。
一方、年配の院長先生が経営している歯科医院などでは、昔からのやり方を引き継いでいることが多く、アポイント帳に記入していくスタイルもまだまだ行われています。
どちらのやり方でも言えることですが、治療内容というのは一定ではなく病状に応じて治療時間は変動します。そのため、すでに「この治療は何分」と決まっていたとしても、時間内に終了させることができないこともしばしばあります。
根管治療の場合
例えば根治ひとつ見てみても、患者さんによって治療時間が全く異なります。
前歯や、小臼歯などは歯根の数が少なく、比較的根管が広いため治療がしやすく時間通りに進みやすいです。しかし、大臼歯になると歯根の数が多く、特に下顎の場合は唾液が根管に侵入しやすいため治療しにくく、時間がかかってしまうこともあります。
また、根治は病名がPelなのかPulなのかでも治療時間や期間も異なるため、カルテをしっかりと見て、次回の治療予定の内容と病名を確認して判断せねばなりません。
歯根のう胞などができてしまうPelは、歯根の先などの膿を出していく必要があるため、一回ごとの治療時間とトータルの治療期間が、神経の処理が主になるPulと違いかなり長くなります。
このように、ひとつの治療を見てみても、使用する時間に違いがあるため、機械的に予約を入れていくと、ズレが生じてしまい患者さんへの待ち時間となってしまうのです。
時間の目安
治療を行う歯科医師により治療時間は異なりますが目安として、だいたいの治療における所要時間は以下のようになっております。
- う蝕処置(CR充填など) 10〜15分
- う蝕処置(インレー形成など) 10〜15分
- 抜髄15〜20分(ただし麻酔の時間を入れる場合は更に15分以上あった方が良い)
- 根治(または根充も) 10〜15分
- FMCやブリッジ形成20~30分
- 抜歯30分
一般的な保険治療を行うのでしたら多少誤差はあると思いますが、この時間とそれほど違いは出ないはずです。
ちなみに自費診療の場合は、レーザーやマイクロスコープを使用して治療を行うところもあり、所要時間もかなり必要となります。
自費診療のみで運営されている歯科医院でしたら、さほど問題ないのですが、保険診療の合間に、このような自費診療を行う場合は予約の入れ方には注意してください。
特別な機材を使用して行う治療は、時間内に終わらないことも多いです。さらに、次の治療も時間がかかるものですと、時間のズレが大きくなり患者さんの待ち時間がとても長くなってしまいますので、考えて予約を入れる必要があります。
歯科衛生士さんの動きも考える
どの歯科医院でも行なっていると思いますが、業務の効率化のために一台のユニットで歯科医師がう蝕処置と同時に、別のユニットでは歯科衛生士さんがスケーリングやSRPを行なうことがよくあります。
また、歯の型を取るなども、歯科医師がいなくてもスタッフで行うことができるため、他の患者さんの治療を行なっていても、業務をこなしていくことも可能です。
特に1日の診療人数が多い歯科医院では、このような方法をうまく取り入れて行なって行かないと、人数をこなすことはできませんので、うまく組み合わせていく必要があります。
アポイントは同じ時間帯に何件か同時に入れていくことになりますが、上述したことを考えて入れていかないと、歯科医師は特にすることもなく手が空いているが、歯科衛生士さんなど他のスタッフは忙しくなってしまう、ということも大いにあり得ます。
具体例をあげると
- 1台目のユニットで歯科衛生士さんがSRP
- 2台目のユニットで歯科医師が根治
- 3台目のユニットで形成後の印象採取
このような状況だったとします。
このときに、2台目と3台目に座っている患者さんがスケーリングなど必要だった場合、歯科衛生士さんの少ない歯科医院の場合は、何台も掛け持ちして行わなければならなくなるため忙しくなってしまいます。
そこで重要になってくるのが、予約を入れる場合に行う治療は歯科医師が行うものだけなのか、そうでないのか、ということです。
スケーリングなどのP治療は、う蝕処置や根治と並行することが多いですし、印象採取も大きなブリッジですとかなり時間がかかってしまいます。
このような治療があるということも含めて予約を取っていかないと、効率が悪くスタッフばかりが忙しくなり険悪な雰囲気になってしまうなんてこともあり得ますので注意しましょう。
治療の流れを読んでスムーズにアポイント管理を
慣れるまで大変ですし、治療内容を把握しておかねばなりませんので、予約を入れていくことは初心者の方にとっては難しく感じることも多いのではないでしょうか。
実際に「あの子が予約入れるといつも忙しくなるから嫌」という声を何度も聞いたことがあります。私が耳にしたのは、別の受付業務を行なっている方のことでしたが、知らないところでは自分も言われていたかもしれません。
最初のうちや、患者さんの予定などでは予約状況がタイトになってしまったら先に「◯日の◯時ごろは忙しくなってます」と先に伝えておくと、先に心構えができるからか、嫌な気分なさせることが少なくなります。
最初から完璧に業務をこなせる人はいませんし、ベテランでも失敗はしてしまいます。「申し訳ないけどよろしくおねがいします」という姿勢を見せるだけでも、随分と印象は変わりますので、このような気遣いも大切ですよ。
歯科医院ごとのやり方も当然あると思いますので、そちらをまずは優先するべきではあります。そのうえで、今回ご紹介した内容も参考にしつつ、スムーズな診療を行える予約状況を作れるようにしていきましょう。
執筆者 トヨタマ
無資格、未経験で歯科医院で働き始めて、歯科助手を経て歯科事務職をこなすようになり、気が付けば一人でレセプトをするまでに。多忙な業務のため、鬱になり退職しましたが、未経験から働くためのノウハウをお伝えしたいです。