メインメニュー >

クラウド型ならば導入コストも抑えられる、電子カルテ導入のメリット【医療のICT化 第2回】

医療ICT

2015年3月にレセプトオンライ請求の猶予期間が終了し、書面による診療報酬請求が不可となります(厚労省請求省令)。

2014年12月に発表された株式会社シード・プランニングの市場調査によると、診療所向け電子カルテ市場は2013年の135億円から2018年には238億円伸び、納入数は2013年時点の4090件から倍増する見通しとのことです。
背景には、2010年の厚生労働省通知「『診療録等の保存を行う場所について』の一部改正について」により、医療情報データの外部保存が認められ、クラウド型が進み、厚生労働省が推し進める地域連携の動きへの参加があります。
今回は電子カルテ導入のメリットについて考えてみます。

クラウド型電子カルテの普及で導入費用は下落傾向

2009年時点のクリニックでの平均導入費用は440万円でした。
近年ではベンチャー企業が低価格のものを発売しています。オープンソース型従量課金制でパソコン以外の初期投資0円というものまであります。

また、昨年9月に発売された富士通のクラウド型電子カルテでは、大病院とほぼ同じような機能で約700万円という初期投資額です。大病院では億単位の投資額だったことを考えれば、中小の病院にとってはうれしい価格です。

富士通の製品に限らず、クラウド型であれば、アプリケーションやサーバ、プラットフォーム(ソフトウェアやハードウェアを動かすために必要な基盤となるもの)を用意する必要がなくなるため、その分、購入しやすい価格帯になってきていることには違いありません。

導入メリットとリスク

では、実際に電子カルテを導入するとどんなメリットがあるのでしょう?

  • 1.半永久的にカルテを保存できる。保管場所も困らない。
  • 2.紙代の削減
  • 3.電子化されていることで、必要なデータの抽出、加工が容易。
  • 4.他施設との連携が容易。
  • 5.クラウド型であれば、自分のところで保守点検する必要がない。
  • 6.クラウド型でタブレットと連携できるタイプなら往診時も必要な情報を見ることができる。
  • 7.PACS一体型電子カルテであれば、フィルムの保管場所にも困らない。
  • 8.病院の場合、必要に応じてデータの共有を図ることができる。(端末さえあれば、閲覧だけなら、院内の離れた部署であっても同時に同じものを見ることができる)

電子カルテ導入では上記のようなメリットが挙げられます。

ただ、いいことばかりではありません。クラウドでやりとりできるということは、情報を盗まれてしまう危険性も従来型と比べると高くなってしまいます。

患者様の個人情報が漏えいしてしまうと医療機関として信用を失いかねません。

情報流出の対策としては、ベンダーに確認して、セキュリティソフトの導入なども合わせて検討するとよいでしょう。また、スタッフの過失による流出を防ぐために、操作トレーニングをしっかりと実施するとともに、個人情報の取り扱いに関する勉強会なども開催するとよいでしょう。

情報流出に対する対応さえ万全にしておけば、診療の効率化、人的・物理的コストの削減など、導入メリットの方が大きいと言えるでしょう。

2016年度診療報酬改正に向けて

2015年1月28日の中医協総会では「次年度診療報酬改定に向けた検討の場について(案)」が議題に上がりました。
外来医療の機能分化・連携の推進とICTを活用した医療情報の共有の評価の在り方が検討課題となっています。医療機関同士で情報交換できる体制として、電子カルテが施設基準の要件になってくることが予想されます。
今後の診療報酬改定の要件などが電子カルテありきで話が進んでいくことを考えると、これを機会に整備すべきではないでしょうか。

関連リンク

東條よしひろ

執筆者 

新潟県内の地域医療支援病院で8年間勤務ののち、専門学校講師として医療事務関連科目を担当。現在は医療事務関連の非常勤講師やコラムなどの執筆活動を行っている。