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介護ロボット -対話型Pepperと体力型RIBA-

pepper(ソフトバンク)

2000年前後には、ペットロボットのAIBO(ソニー)や、二足歩行のASIMO(ホンダ)といったロボットが発表され、ロボットブームを巻き起こしました。そして今また、Pepper(ソフトバンク)という新しいタイプのロボットが開発され、そのコミュニケーション能力の高さから、高齢者との対話によって医療・介護に役立つ可能性が注目されています。

ロボットの現場利用—Pepperの登場

ついに、「ロボてなし」という言葉が使われ始めました。「ロボットの可能性に人の気配りを移植した 人に寄り添うテクノロジー」と、認知症患者をサポートするPepper用アプリの共同開発に携わるフューブライト・コミュニケーションズは表現しています。

ソフトバンクロボティクスが開発したコミュニケーション型のロボット「Pepper」は、すでに2千社の企業が導入を開始しました。2015年6月20日に一般発売される以前から医療・介護業界でも注目され、介護用アプリを搭載したPepperの介護施設での実証テストなども実施済みです。たとえば、2015-16年に川崎市(神奈川県)のサポートにより実施された研究開発事業では、体操や音楽などのレクリエーションのほか利用者が個別にPepperとの会話を体験し、「孫のようだ」「また来てほしい」といった好感触を得ていました。その結果はデイケア用アプリケーションとして結実し、職員の負荷を軽減することや、レクリエーション等のコンテンツの充実による利用者の満足度向上を目的として活用されています。

現在、ソフトバンクが提供するPepper for Bizプランは、Pepper用アプリとして受付・接客・ヘルスケア・インバウンド(他言語対応)の4分野がそろえられ、月額5万5000円(36か月のレンタル契約)で、Pepper本体とともにこれらのアプリを使うことができるというものです。介護施設向けのアプリとしては、レクリエーションのほか、認知症患者の徘徊みまもりアプリ(徘徊を察知すると、ユーザーに報告するとともに本人に話しかけて足止めする)などもあります。

介護ロボットの分類

医療・介護分野で活躍が期待されるロボットは、Pepperのようなコミュニケーション重視のものだけではありません。いまのところ「介護ロボット」という言葉には明確な定義はなく、それどころか、ロボットかロボットでないかの境界すらあいまいなのが現状ですが、現在の介護ロボットを分類するとしたら、次のように分けられるでしょう。

介護支援型ロボット
移乗・入浴・排泄など介護業務の支援をする
自立支援型ロボット
歩行・リハビリ・食事・読書など介護される側の自立支援をする
コミュニケーション・セキュリティ型ロボット
癒やしてくれたり、見守りをしてくれる

出典:介護ロボット推進事業(公益社団法人かながわ福祉サービス振興会)

自立支援型で注目されているのは、HAL(サイバーダイン)でしょう。脳の信号を察知して動作の意志をとらえ、麻痺などがある患者がリハビリをする際に体の動きをアシストするロボットです。健常者も装着可能なため、介護者のサポートにも応用が期待されます(介護支援型にあたる機能)。
HALは体に装着するタイプのサポートロボットの1つですが、これなどは従来のロボットの概念とは異なる新しい分野と考えることもできそうです。

介護ロボットの未来

ところで、介護支援型のロボットの1つに、RIBA(RTC)があります。動物のクマのような外見で、移乗動作に特化した「世界初の人間を抱き上げるロボット」として、欧米のメディアで頻繁に取り上げられました。研究段階のまま商品化されることはなかったようですが、筆者は2010年に研究施設を訪ね、開発者にインタビューをしています。

商品化に到らなかったことの背景の1つとして、「部分的にでも人間以上の力を付加されたロボットは、産業用ロボットのように隔離され厳重に管理されている」という現状の打破が難しかったことがあるのではないでしょうか。開発者の向井利春氏は「だからこそ避けられてきた分野だが、私たちはその開発が必要なことだと考えた」そうです。なぜなら、近い将来の介護業界における深刻なマンパワー不足は明白だから。
向井氏は当時、「ロボットというと手塚治虫氏の漫画に出てくる鉄腕アトムのイメージが大きく、自分の意志に従って行動する自律型を期待しがちだが、現代の技術レベルでは、そこまでは到達していない」と言っていました。

Pepperの今後の展望として、家庭で服薬や血圧測定を促し、異変があれば医療・介護関係者に知らせるといった在宅医療のサポート、さらに、各家庭や施設で蓄積された医療データを分析し、今後の福祉に活かしていくことも考えられます。利用者との会話データなどを蓄積して活用できるというのは、これまでのロボットにはなかった特色でしょう。自然な会話に近いかたちのコミュニケーションがとれるPepperの登場で、鉄腕アトムの世界に向けて、一歩前進したといえるかもしれませんね。

ただ、もしもレクリエーションのような仕事をロボットが担当し、力仕事を人間の介護者が担当するということになったら、どうでしょうか……?
今はまだロボットがもの珍しい時代です。ロボットと一緒に撮った写真を孫に見せれば、大喜びでしょう。ですが、各家庭にロボットが1台以上入るようになる時代は、もうすぐそこという気がします。実際、70代の私の父は「頭の体操」と称して、ちょっとした会話や雑用をこなせるロボットの組み立てを始めました。

介護ロボットが当たり前のように一般に普及したときに、その利用価値はどうなのか、医療・介護スタッフにとってどのようなロボットが求められるのか、一歩先を見据えて、今後のことを考えていきましょう。

Sawa

執筆者 

記者・編集者を経て、フリーに。医療系の専門出版社である日本医療企画の介護・医療経営雑誌(『介護ビジョン』『ばんぶう』)で執筆を担当するなど、医療・福祉分野を中心に、U-CAN(日本通信教育連盟)、学研、朝日新聞社、リクルート、ビッグイシュー日本などで執筆。2011年よりロンドンにてモンテッソーリ教育を学ぶ。AMI国際モンテッソーリ教師・保育士。