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歯科訪問診療料の算定のポイント

はみがき

はじめに

平成28年度の保険診療の診療報酬の改定では、在宅歯科医療に重点を置いた改定がなされました。そのひとつに、歯科訪問診療料の改定があります。訪問診療料の改定についてまとめてみました。

歯科訪問診療

同じ建物に住んでいる歯科医院への通院が難しい患者を診療した場合に算定できます。
歯科訪問診療には歯科訪問診療1、歯科訪問診療2、歯科訪問診療3があり、それぞれ算定するための条件や点数が異なります。歯科訪問1・2・3を算定する場合は、初再診料は算定できません。

歯科訪問診療1

歯科訪問診療1は、866点です。
歯科医院への通院が難しい患者を1名だけ、歯科医師が往診で診察した場合に算定できます。

往診での診療に際して、20分以上の診療時間をかけることが必要です。ただし、治療途中に患者の容態が急変し、それ以上歯科治療を続けることが出来ない場合は、20分に満たなくても算定できます。このとき、救急搬送の必要性があり、救急搬送を行なった場合は、救急搬送診療料を算定することが出来ます。救急搬送診療料は1300点です。また、著しく治療が難しく20分以上の治療に耐えられない様な場合も、算定することは認められます。
もし、20分に満たない診療時間の場合は、後述する歯科訪問診療3の扱いとなり120点となります。

歯科訪問診療2

歯科訪問診療2は、283点です。
同じ建物に住んでいる人に対して、同じ日に歯科医師が9人以下の訪問診療を行なう場合に算定できます。9人以下とありますが、1名の場合は訪問診療料1を算定しますので、事実上2~9人の訪問診療が対象となります。

訪問診療料1と同じく、診療時間が20分以上であることが要求されます。そして、急変時や20分もの治療時間に耐えられない場合は、例外として20分に満たなくても算定することが認められています。
通常の患者であって、診療時間が20分に満たない場合は、歯科訪問診療3の扱いとなり、120点となるところも同じです。

歯科訪問診療3

歯科訪問診療3は120点です。
同一の建物に住んでいる患者を、歯科医師が同じ日に10人以上訪問で診療した場合に、算定することが認められます。歯科訪問診療1・2との違いは、人数もありますが、診療時間が20分以上という制約がないところです。

『同一の建物に住んでいる者』とは?

歯科訪問診療1・2・3を算定する時の条件に出てくる同一建物居住者には、どのような場合があてはまるのでしょうか。

まず挙げられるのが、一戸建てやマンションの自宅に住んでいる者です。
そのほか、老人福祉法に定められている養護老人ホーム、ケアハウスなどの軽費老人ホーム、有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、マンションなどの集合住宅に住んでいる複数の患者もあてはまります。また、介護保険法に定められているショートステイ、グループホーム、宿泊サービスなどを利用している複数の患者も対象となります。

そして、同一建物の条件については、同一の敷地内や、隣接している土地に複数の建物が集まったマンションや集合住宅等の場合は、それぞれが別の建物として扱います。
中には建物自体は別であっても、建物同士が廊下で繋がっている場合があります。このような建物は、それぞれを別々の建物として扱います。

歯科訪問診療1・2・3を算定できる歯科医院について

歯科訪問診療1・2・3を算定できる歯科医院は、在宅療養支援歯科診療所の指定を受けている歯科医院です。該当しない場合は、初再診料に相当する別に定められている訪問診療料を算定することになります。また、歯科医院が特別の関係にある施設などに訪問診療を行なう場合は、歯科訪問診療1・2・3を算定することは認められていません。特別な関係とは、歯科医院の開設者と施設の開設者や代表者が同じ人物だったり、親族関係者であったりするなどの場合です。

歯科訪問診療の注意点

歯科訪問診療は、患者の求めに応じて歯科医師が訪問診療を行なわなければなりません。もしくはその訪問診療に基づいて、継続的に歯科治療が必要と歯科医師が判断した患者に対して、診療を行なうことが条件です。
ですから、患者の同意を得ていることが必須です。

介護施設などに住んでいる患者に、訪問診療2や訪問診療3を算定した場合は、訪問診療をした月に、訪問診療をした日時や訪問診療をした歯科医師の氏名が書かれた文書を提供しなければなりません。提供する相手は、患者本人かその家族、もしくは介護施設の職員などです。そして、その文書の写しを、歯科診療所でも保管しておく必要があります。

訪問先と歯科医院が16[km]以上離れていると、無医地区などの例外を除いて訪問診療を行なうことはできません。算定条件の診療時間には、準備や片付け、患者の移動のための時間は含まれません。

まとめ

歯科訪問診療料は、人数や診療時間など算定するための条件がいろいろと定められています。訪問する建物によっても条件があります。こうした条件に当てはまるかどうかを注意して算定する必要があります。

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抜歯屋さん

執筆者 

『市中病院に勤務している歯科医師です。専門分野は口腔外科です。電車に揺られて通勤中。好きなものはレゴとスターウォーズ。いつか、レゴで家の模型を作って、ストームトルーパーを配置するのが夢』